シェールガス・オイル革命の石油化学への影響 -需給バランス・新製造技術から予測する将来の産業構造-

室井 髙城  アイシーラボ代表 早稲田大学招聘研究員

構成

発刊日 2013年11月07日 体裁 B5判上製本 207頁

分野

製造業全般・分類不能

制作

価格

60,500円 (税抜 55,000円) 1点 在庫あり

商品説明

 米国に始まったシェールガス革命は、予想以上に急速に世界の産業に大きなインパクトを与え始めた。中東の石油に大きく依存していた世界のエネルギーの地図は安価なシェールガスに塗り替えられようとしている。エネルギー資源が安価になることによりエネルギー産業にとって朗報なだけでなくほとんどあらゆる産業が恩恵を受けることになる。まさに世界的なエネルギー革命が起こりつつありシェールガス革命といわれるゆえんでもある。シェールガスの主成分はメタンである。メタンは主として火力発電の燃料として用いられる。石油化学原料として用いられるのはシェールガスに含有するNGL(Natural Gas Liquid)である。米国では従来からエチレンは主として天然ガスに含まれるエタンのスチームクラッキングにより製造されてきた。米国では2000年になると天然ガスの生産量が減少し始め枯渇が心配されていた。

 ところが非在来型のシェールガスが大量に掘削できることがわかったことから米国の石油化学は一変した。安価なエチレンが多量に製造できることになったからである。米国と異なり日本やアジアではエチレンはナフサのスチームクラッキングで製造されている。2000年になると石油価格は上昇し始め$100/bblを超えるようになってきた。そのためナフサの価格は高騰した。その結果、シェールガス含有エタンから製造されるエチレンとナフサから製造されるエチレンの価格差は4~5倍にもなってしまった。安価なエチレンで合成されるポリエチレンや塩化ビニルの価格はナフサのクラッキングで得られる価格の1/4~1/5である。そのため米国では相次いで大規模エタンクラッカーの新・増設が始まった。数年後に新増設エタンクラッカーが本格稼働すると、ナフサを原料とした石油化学はシェールガスを原料とした石油化学と世界市場でぶつかることになり、ナフサ原料石油化学はエタン原料の石油化学に駆逐される恐れが出てきた。一方、ナフサクラッカーではエチレンの他にプロピレンやブタジエン、C4、C5、芳香族が副生するが、エタンクラッカーからは副生しない。そのため新たなプロピレンやブタジエン、ベンゼンの製造技術が必要となっている。   「はじめに」より

内容紹介

第1編 産業動向
〔1〕 シェール革命
1. シェールガス革命の到来
2. シェールオイル革命


〔2〕 シェールガスの石油化学産業への影響
1. 天然ガス価格
 1.1 米国の天然ガス価格
 1.2 世界の天然ガス価格
2. エチレンの価格
 2.1 シェールガスによる安価なエチレン価格
 2.2 シェールガスによるエチレンの製造
3. エタンクラッカーの利益向上
4. シェールガスによる石油化学品の合成 
 4.1 エタンクラッカーによるエチレンの製造 
 4.2 ナフサクラッカーとエタンクラッカーの生成物の違い
 4.3 プロピレン不足
 4.4 ブタジエン不足
 4.5 ベンゼン不足
5. 化学品需給のアンバランス
6. シェールオイル
7. ナフサクラッカーの終焉
8. 化学産業へのインパクト


〔3〕 化学産業を取り巻く世界的環境の変化
1. 21世紀後の石油化学
2. 世界のエネルギー
3. 石油価格
 3.1 石油価格の高騰
 3.2 今後の石油価格
4. 中東産油国の台頭
 4.1 大型エチレンクラッカーの稼働
 4.2 中東諸国石油化学品の投資推移と予想
5. 新興国のエチレンプラント
 5.1 中国エチレンプラント
 5.2 アジア・太平洋諸国エチレンプラント
6. 天然ガス利用
7. シェールガス革命
8. シェールガスを用いたエチレン価格
9. エチレン需給バランス 
 9.1 北米エチレンバランス
 9.2 中東エチレンバランス


〔4〕 復活する米国化学産業
1. NGL(Natural Gas Liquid)
2. エタンクラッカーへのシフト
3. 米国エチレン生産量の推移と見通し
4. シェールガスのエネルギーコストへの恩恵
5. エタンクラッカーの新・増設
6. シェールガスによるエチレン誘導体コスト比較
7. プロパン脱水素によるプロピレン価格
8. プロピレンの増産
9. 米国の石油化学品の輸出
 9.1 米国エチレン誘導体の輸出
 9.2 プラスチックの輸出
10. シェールガスを用いたGTLプロジェクト
11. 北米メタノールの生産
 11.1 メタノールコスト
 11.2 Methanex
 11.3 Celanese
 11.4 LyondellBasell
 11.5 米国メタノールプラント計画
12. 北米アンモニアプラントの再開と新設
13. 米国CO2排出量
14. 米国化学産業の発展 
 14.1 米国 化学産業の成長予測
 14.2 米国化学産業貿易収支
 14.3 米国産業の生産増加と雇用創出
15. 米国シェールガスオイル生産の影響
16. 米国の輸出政策
17. 欧州への影響


〔5〕 日本の石油化学
1. 石油化学原料
2. ナフサクラッカーを基礎とした石油化学
3. ナフサ中心の日本の石油化学
4. ナフサ原料
5. ナフサクラッカーの発展
6. エチレン生産量推移
7. 日本の石油化学品の輸出
8. 日本の石油化学の直面している課題
9. 日本のエチレンセンターの実情


第2編 非在来型ガス・オイルの動向
〔1〕 資源エネルギーの埋蔵量
1. エネルギー資源埋蔵量


〔2〕 シェールガス
1. シェールガス
2. シェール層の由来
3. 在来ガスとシェールガスの違い
4. 米国シェールガス堆積盆地
5. シェールガスの掘削 
 5.1 掘削技術
 5.2 ドリリング
 5.3 フラクチャリング
 5.4 ウエットガス田
 5.5 坑井寿命
6. 米国シェールガス生産量
 6.1 米国内の天然ガスパイプライン網
 6.2 米国シェールガス生産予測
7. 米国天然ガス需給バランス
8. 世界のシェールガス
9. 中国のシェールガス
10. 米国天然ガス価格


〔3〕 NGL (Natural Gas Liquid)
1. NGL
 1.1 NGLの定義
 1.2 NGLの製造
2. NGLの供給量
 2.1 NGL生産実績
 2.2 NGL供給源
 2.3 NGL生産量推移
 2.4 NGL製造メーカー
3. PADD別NGLの生産量
4. 北米NGL生産と輸出余力予測
5. NGLの需要
 5.1 NGLの用途
 5.2 NGL需給
6. NGL価格


〔4〕 シェールオイル
1. シェールオイル
2. シェールオイルの性状
3. シェールオイル生産量予測
4. シェールオイル可採埋蔵量
5. 米国の液体燃料の生産予測
6. 日本のシェールオイル


第3編 化学品の新製造プロセス
〔1〕 エチレン
1. エチレン
2. エチレンの用途
3. エチレンの工業化プロセス
 3.1 エチレンの製造ルート 
 3.2 ナフサクラッキング 
 3.3 エタンクラッキング 
 3.4 MTOプロセス
 3.5 エタノールの脱水
4. 開発または研究中のエチレンの新製法
 4.1 エタンの脱水素によるエチレンの製造
 4.2 ショートタイム反応
 4.3 メタノールからエチレン
 4.4 エタンの酸化によるエチレンとCOの合成
 4.5 エタンとCO2からエチレンとCOの合成


〔2〕 プロピレン
1. プロピレンの製造
2. プロピレンの需要
3. 不足するプロピレン
4. プロピレンの製法
5. プロピレン製造プロセス
6. 接触法ナフサのスチームクラッキング
 6.1 ACO プロセス 
 6.2 NEDOプロジェクト
7. 低級オレフィンの接触分解によるプロピレンの製造
 7.1 低級オレフィンの接触分解プロセス
 7.2 オメガプロセス 
 7.3 Superflex
8. 流動床接触分解プロセス
 8.1 FCCプロセス
 8.2 PetroFCC TM
 8.3 HS-FCC
 8.4 DCC (Deep Catalytic Cracking)
9. プロパンの脱水素
 9.1 プロパンの脱水素反応
 9.2 Catofin プロセス
 9.3 Oleflexプロセス
 9.4 STARプロセス
 9.5 プロピレン脱水素プロセス
 9.6 北米脱水素プラント建設計画
10. メタセシス
11. MTP プロセス
 11.1 Lurgi MTPプロセス 
 11.2 DTPプロセス
12. プロセスの経済性比較 
13. 開発中のプロセス
 13.1 エチレンとメタノールからプロピレン
 13.2 エチレンからプロピレンの合成
 13.3 エタンからプロピレンの合成
14. 研究されている触媒反応
 14.1 エタノールからプロピレン
 14.2 メタンからプロピレン


〔3〕 ブタジエン
1. ブタジエンの需要
2. ブタジエンの用途
3. ブタジエンの需給バランス
4. ブタジエンの製造ルート
5. ブタジエン製法の歴史
 5.1 アセチレン法
 5.2 Lebedev法
 5.3 アセトアルデヒドとエタノールからブタジエンの合成
 5.4 脱水素プロセス
 5.5 酸化脱水素プロセス
6. ブタジエンの製法
 6.1 抽出法
 6.2 ブテンの酸化脱水素
 6.3 ブテン原料
 6.4 アルドール法


〔4〕 C4, C5留分
1. C4留分, C5留分
2. C4留分の用途
 2.1 ラフィネート
 2.2 イソブテン
 2.3 ブタン
3. 米国でのC4の利用
4. C5留分の用途
5. ナフサクラッカーから得られるC5留分
 5.1 C5留分組成
 5.2 イソプレン
 5.3 CPD(シクロペンタジエン) 
6. リターンC4, C5


〔5〕 ベンゼン
1. ベンゼン需要
 1.1 世界の需要
 1.2 ベンゼンの用途
 1.3 ベンゼンの地域別需要
2. ベンゼンの製造
3. ベンゼンの不足
4. 従来のベンゼンの製造技術 
 4.1 リフォーメート(改質ガソリン)
 4.2 ナフサクラッキング
 4.3 脱アルキル法
 4.4 トルエンの不均化
 4.5 石炭の乾留
 4.6 ベンゼンの製造ルート
5. ベンゼン製造プロセス
 5.1 軽質オレフィンからベンゼンの合成
 5.2 パラフィンからベンゼンの合成
 5.3 LPGから芳香族
 5.4 各プロセスのまとめ 
 5.5 FCC分解軽質軽油の水素化分解 (LCO-XTM)
 5.6 メタノールから芳香族(MTGプロセス)
 5.7 エタンから芳香族の製造


〔6〕 天然ガスのガス化
1. 合成ガス
2. 天然ガスの脱硫
3. 水蒸気改質
 3.1 予備改質
 3.2 一次改質
 3.3 二次改質
 3.4 巨大なスチームリフォーミングプロセス
 3.5 改良スチームリフォーミング触媒
4. スチームリフォーミングとオートサーマルリフォーミングの組み合わせ
5. ドライリフォーミング
6. メタンの部分酸化プロセス
 6.1 CPOXプロセス
 6.2 ConocoPhillips
 6.3 部分酸化の長所
7. 小型改質反応器
 7.1 Compact GTL改質器
 7.2 Velocys プラント


〔7〕 メタンの直接利用
1. メタンケミストリー
2. メタンからメタノールの合成
 2.1 低温メタノール合成
 2.2 メタン酸化によるメタノール合成
 2.3 メタンの過酸化水素酸化によるメタノールの合成
3. メタンの酸化二量化
 3.1 OCM (Oxidation Coupling of Methane) プロセス
 3.2 BHP プロセス (Broken Hill Proprietary)
4. メタンのハロゲネーション
 4.1 ハロゲン化
 4.2 HXによるオキシハロゲン化
 4.3 ハロゲン化メタンからプロピレン
5. メタンの活性化


〔8〕 エタンの直接利用
1. エタンから酢酸の合成
2. エタンからプロピレンの合成
3. エタンから酢酸ビニルの合成
4. エタンとベンゼンからスチレンの直接合成
5. エタンからアクリロニトリルの合成
6. エタンの脱水素による芳香族の合成


〔9〕 プロパンの直接利用
1. プロパンの脱水素によるプロピレン
2. プロパン法アクリロニトリル
 2.1 旭化成プロパン法アクリロニトリルの合成
 2.2 脱水素法とのコスト比較
3. プロパンからアクリル酸
4. プロパンからベンゼンの合成


〔10〕 C1ケミストリー
1. 天然ガスの供給
2. C1 ケミストリー
3. 合成ガスの利用
4. 合成ガスの直接利用
 4.1 合成ガスからエタノールの合成
 4.2 合成ガスからエチレングリコール
5. メタノールの利用
 5.1 メタノール
 5.2 メタノールの利用
 5.3 メタノールから炭酸ジメチル(DMC)
 5.4 メタノールからエタノールの合成
 5.5 ジメチルエーテル経由エタノールの合成
 5.6 メタノールから酢酸
 5.7 メタノールからガソリン
 5.8 メタノールからエチレン, プロピレン
6. 酢酸の利用
 6.1 酢酸の水素化によるエタノールの合成
 6.2 酢酸ビニルの直接合成
 6.3 エチリデンアセテート 
7. C1化学フロー


第4編 日本の石油化学生き残り戦略
〔1〕 日本の石油化学生き残り戦略
1. 日本の石油化学の現状
2. 原料の輸入 
 2.1 シェールガスの輸入
 2.2 米国LNGの輸出余力
 2.3 NGLの輸入
 2.4 輸入シェールガスを用いたエチレン, プロピレン価格
 2.5 シェールオイルの輸入
3. 中東で製造困難な化学品
4. 石油化学各社の動向
 4.1 三菱化学
 4.2 住友化学
 4.3 三井化学
 4.4 旭化成
 4.5 昭和電工
 4.6 出光興産
 4.7 クラレ
 4.8 JX日鉱日石
 4.9 日本触媒
 4.10 シンテック(信越化学)
 4.11 東レ
5. 対策